田中事務所からのお知らせ

2023/03/09

4月から「給与のデジタル払い」が可能になります。
厚労省による資金移動業者の審査があるので、実際に利用できるのは夏以降になると思われます。


2023/03/07

4月から月60時間超えの時間外労働の割増率が50%となります。(中小企業にも適用となります。)


主な対応なエリア

 
東京都全域、 神奈川県 横浜市・川崎市
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プライバシーマーク

2019年7月10日に
プライバシーマークを取得しました

「社会保険労務士個人情報保護事務所」認証

2020/11/01
「社会保険労務士個人情報保護事務所」認証
業界団体の社労士全国会が認証しているものです。

就業規則のQ&A

6 就業規則

Q 6-1 【 当社は自由な雰囲気を大切にしたいのですが、就業規則は必要ですか? 】

当社は、デザイン業務をメインとする会社のため、社員の創造性を尊重しています。労働基準法などをベースにした就業規則は「古い」「固い」というイメージがあります。最近、社員が10名を超えたのですが、やはり就業規則を作らなければいけませんか?

A 6-1

法的な義務があることはもちろんですが、自由でクリエイティブな雰囲気な会社でも、一定の規律と、企業人としての責任は求められるものと考えます。
自由があれば責任もあります。
必要最小限のルール(就業規則)は定め、柔軟に運用する事をお奨めします。

Q 6-2 【 パートタイマー用の就業規則を作成しましたが、意見聴取はパートタイマーにするべきでしょうか? 】

当社は、約20名の正社員を中心に仕事をしています。以前より2~3名のパートタイマー(及び一時的な学生アルバイト)もいるのですが、この度、仕事の見直しにより、業務を細分化して定型業務を担当するためのパートタイマーを5~6名追加で雇用することになりました。(一方、正社員にはより創造的な業務や新規業務の獲得に時間を割いてもらう予定です。)
 そのため、パートタイマー向けの就業規則を作成するのですが、意見聴取をするのはパートタイマーとなるのでしょうか?

A 6-2

 一般的に、正社員とパートタイマーとでは、賞与・退職金・特別休暇・休職・慶弔などの取り扱いに差を設けることが多く見られます。
この場合、就業規則はそれぞれの雇用形態によって異なるものにする必要があります。
 
 さて、就業規則を作成した際は「労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」(労働基準法第90条)とされています。
ここでの「労働者」は全労働者の過半数を代表する者となりますので、それが正社員であればパートタイマーの就業規則であっても正社員の意見を聴けばよいことになります。

 一方、パート有期法第7条では次のように努力義務を定めています。
 短時間労働者に係る就業規則を作成したときは、「当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。」

 実務においては、正社員とともにパートタイマーの代表者にも意見を聴くことが望ましいと考えます。


 なお、正社員とパートタイマーの職務内容が同一である場合は「同一労働同一賃金」の考え方によって賃金を始めとした労働条件を同一にする必要があるのでご注意ください。ただし、職務内容(仕事の責任や負担、異動の有無)などに差異がある場合はその差異に応じた労働条件の違いは許容されます。
 

Q 6-3 【   当社は従業員が10人未満ですが就業規則を作成しました。作成したのであれば従業員に周知することは必要ですか? 】

 当社は企業向けホームページの作成と運用のコンサルティングを行っている会社です。代表者である私が学生時代の友人に呼びかけて、3年前に2名の役員でスタートしました。特定業界に特化して提案力を高めてきたこともあり、社員とアルバイトを含めて7名を雇用する規模になりました。従業員は厳格な時間管理などルールの束縛を好まない人が多く、良く言えば「自由な職場」悪く言えば「規律のない職場」です。

 このような状況下、市場により良いサービスを提供するために会社規模の拡大を考えています。そのため、自由は認めつつも規律のある職場にするべく就業規則を作成しました。しかし、就業規則を公開すると「管理色」が強まることを従業員が嫌気して、モチベーションが下がることを心配しています。そこで、就業規則は問題が起こりそうな時や起こった時に、必要に応じて該当部分を開示しようと考えています。
 つまり、就業規則を作成はするが周知しない、という取り扱いになります。この進め方は問題ないでしょうか?

A 6-3

 常時10人以上の労働者を雇用している会社は就業規則の作成及び届け出が義務付けられています。(労働基準法 第89条)
そして、この就業規則を社内に周知する義務が労働基準法に次のように定められています。(労働基準法 第106条)

『 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、
就業規則(中略)を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること(中略)によって、労働者に周知させなければならない。』

さて、労働者が10人未満の会社では就業規則の作成義務はありませんが、
働きやすくトラブルの無い職場とするためや、貴社のようにある程度の規律を求めるためには、作成する事が望ましいでしょう。

の場合、労働基準監督署に届け出ることは任意となります。それでは、106条にある社内への周知は義務となるでしょうか?

異なる見解があります。
まず「周知は義務である」という見解です。

『この義務は、法令の周知義務と並ぶもので、常時10人未満の労働者を使用する
(就業規則の作成・届出義務を課されていない)使用者にも及ぶ。』( 労働法 第12版 菅野和夫 P.201)

続いて、「周知は義務ではなく、任意である」という見解です。

『作成した就業規則を労働者に周知すること自体は望ましいことではあるが、
同条(田中注106条)が罰則付きの規定であることを考えると、任意に就業規則を作成したために罰則が科されることになる解釈は妥当でなく、常用労働者10人未満の使用者の作成した就業規則には同条の適用はないと解すべきである。』(詳解労働法 第2版 水町勇一郎 P.175)

ここでは、罰則の事を考慮して、後者の「従業員への周知は任意」という見解を支持します。

これらを踏まえて、労働者10人未満の会社は、実務上は次のようにされるのが良いのではないでしょうか。

【 就業規則の作成 】
任意ですが、前述の通り就業規則は作成することが望ましいです。

【 労働基準監督署への届け出 】
任意ですが、労働基準監督署へは現時点では届け出る必要はないでしょう。届け出ない方が、社内で柔軟に就業規則の変更が可能です。

【 社内への周知 】
作成した以上は周知すべきと考えます。(周知していなくても106条は適用されないと考える方が妥当でしょう。)

【 労働基準監督署の調査があった場合 】
労働者10人未満の会社が、あえて就業規則を作成するという事は、相応の必要性があってのことでしょう。
そのような状況であるならば
当然に社内へ周知することも必要となるでしょう。

「周知しない」という106条に抵触する事実がないのであれば、
「周知義務」「周知任意」のいずれの見解であっても、当然、106条によって罰則が科されることはありません。

仮に、就業規則を作成したが周知していない労働者10人未満の会社に
労働基準監督署の調査(臨検:労基法101条)があった場合、周知していないことに是正勧告は出されないと考えます。(指導票による指導の対象にはなるかも知れません。)


Q 6-4 【   当社の給与規程に男性従業員だけに支払われる手当が定めてありますが、違法になりますか? 】

 当社は従業員が約15人、社歴は約50年の会社です。私は経理が専門ですが、総務業務も兼務しています。
数日前に労働基準監督署から調査をするという連絡があり、就業規則も準備するように言われました。普段、就業規則など意識したことが無かったのですが、社長に伝えると古い書類が雑然と詰め込まれているキャビネットの中から就業規則を取り出してきました。

 表紙には昭和52年の受理印があります。
当然、内容も古いのですが、気になるのは次の手当に関する規定です。

 『 第10条(住宅手当)
住宅手当は世帯主である男性従業員に5,000円を支給する。』

堂々と「男性従業員」だけを対象としています。
今では、住宅手当は支払われていないのですが
この部分が違法と労働基準監督署に指摘されないでしょうか?


A 6-4

 大いに問題のある条文ですが、現在、住宅手当は支払われていないということであれば、違法ではありません。
但し、この定めの通り運用されていて実際に男性従業員にのみ住宅手当が支給されている場合は、労働基準法に違反します。

労働基準法では第4条(男女同一賃金の原則)が該当します。
「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」

そして、次の通達があります。

『本条の違反が成立するのは、現実に差別的取扱いをした場合であって、
単に就業規則において差別的取扱いをする趣旨の規定を設けただけでは、その規定が無効となるにとどまり、本条の違反とはならない。』(昭23.12.25 基収第4281号 平9.9.25 基発第648号)

とは言え、労働基準法等には多くの改正があります。
最新の内容にメンテナンスした上で、従業員の皆様に周知する必要があります。
これを機会に見直しされることをお奨めします。


Q 6-5 【  就業規則を作ったのですが従業員の説明会をした方が良いでしょうか?  】

 当社は従業員が8人の会社です。就業規則を作成する法的義務はありませんが、トラブルを防ぐとともに、従業員に安心して働いてもらうために、作成しました。ところで、説明会をする必要はあるのでしょうか?

A 6-5

業務のイメージ

説明会の実施は法的に必須ではありません。労働基準法第89条、90条では就業規則について定めています。

ポイントは次の通りです。

(1)労働者を10人以上雇用する会社が作成する。

(2)就業規則に定めなければいけない項目がある。

(3)作成したら、労働者代表の意見書を添付して労基署に届け出る。

労働基準法では説明会には触れていませんが、
労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」という定めはあります。

意見を聴く方法として、労働者代表に「皆の意見を聴いてまとめてください。」と
一任する方法もありますが、「皆の意見を聴く」前段階として、会社主催の説明会を開いて ・従業員が就業規則を理解する ⇒ ・その後に労働者代表がその意見を集約する、とすると円滑に進みます。


また、社員説明会には次のようなメリットもあります。

1 会社からのメッセージ発信になる。
 「どういう事をしてはいけないのか」「会社は従業員に何を望んでいるのか」など、就業規則に書いてあること以外も直接に説明できるので、
会社から従業員に向けてのメッセージ発信の場とする事ができます。


2 「勝手に決められた」という気持ちが少なくなる。
 説明会を開かないと「知らない間に就業規則が変わっていた」などの不満が生じかねません。また、会社として良かれと思っている改正点もネガティブに解釈されるおそれがあります。


3 会社と従業員のコミュニケーションの機会となる。
 コミュニケーション不足がトラブルや不信感の芽となります。説明会では従業員の質問を受け、それにこたえる事で従業員側の理解も進むものと思います。

 なお、就業規則の説明会は初めて作成した時はもちろんのこと、
大きな変更があった時などにもて実施することが望ましいです。
 (説明会を社会保険労務士に行ってもらう方法もあります。)


Q 6-6 【  不就業減額について就業規則に定めた方が良いでしょうか?  】

 当社の給与計算は欠勤した場合は1日分の給与を減額しています。また、遅刻・早退は時間相当分を同様に減額しています。就業規則や給与規程に明記していませんが「ノーワークノーペイの原則」として長年、このように処理を続けていますが、規程に明文化した方が良いでしょうか?

A 6-6

電卓のイメージ

 
 就業規則や給与規程にノーワーク・ノーペイ(不就業減額)を行う旨を明文化することが望ましいです。
 
 ここでは「ノーワーク・ノーペイの原則」が妥当であるか否かということから考えてみます。

 実は「原則ではない」という考え方があります。

【 原則である、という見解 】
「労務の給付が労働者の意思によってなされない場合は、反対給付たる賃金も支払われないのが当然の原則となる。」

(菅野和夫 労働法 第12版 P.990)
「当然の原則」としています。


【 原則ではない、という見解 】

「当事者間の合意内容が明らかでない場合の任意的な解釈準則(補充的なルール)にすぎないものであり、解釈の「原則」とはいえない」
(水町勇一郎 詳解労働法 第2版 P.1164)

こちらは「原則」とはいえない、としています。


☆☆☆☆ 給与計算でノーワーク・ノーペイを行うには ☆☆☆☆

 前者(原則である)の見解に立てば当然にノーワーク・ノーペイ(不就業減額)は可能です。後者の見解(原則ではない)に立っても不就業の時間帯の給与減額は可能と
考えられますが「当事者間の合意内容」を明らかにすることが求められています。
そこで、就業規則(給与規程)に次のように定めるのが良いでしょう。

(規定例)
「遅刻、早退、欠勤等の不就業の時間については無給とする。」

また「原則」であるか否かの議論とは別に、
従業員にルールを理解してもらい、不要なトラブルを防ぐ観点から、入社時にノーワーク・ノーペイ(不就業減額)について本人に説明する事が望ましいと考えます。


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