働き方改革

貴社の「働き方改革」に共に取り組みます。

2018年6月 「働き方改革関連法」が成立しました。
世の中には、AI・ビッグデータ・Internet of Things・ドローン・車の自動運転 などの新しい技術や概念が次々に登場しています。
そして、昨今の人手不足という状況が、これらの新技術を仕事の現場で活用する速度を加速させそうです。
また、労働法関連の改正もあいまって、ここ数年は「日本の仕事の進め方の転換点」になる予感がします。
ここでは、「働き方改革関連法」の概要と、会社として対応すべきことをお伝えします。(当所から毎週、発信しているメルマガを再編集しています。)

法改正の概要

各法改正点と施行年月日をまとめました。

【 2019年4月施行 】

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 年次有給休暇(年5日)を使用者が時季指定して付与
  3. 高度プロフェッショナル制度の創設
  4. フレックスタイム制の見直し(清算期間の延長など)
  5. 労働時間の状況の把握の義務化
  6. 産業医等の機能強化
  7. 勤務間インターバル制度の導入(努力義務)

    【 2020年4月施行 】
  8. 短時間・有期雇用労働者と正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止
  9. 労働者の待遇に関する説明義務の強化
  10. 行政による履行確保及び裁判外紛争解決手続の整備
  11. 派遣労働者と派遣先労働者との不合理な待遇の禁止

    【 2023年4月施行 】
  12. 月60時間超の時間外労働の割増賃金率を50%以上に
    ⇒ 中小企業に対する猶予措置を廃止

中小企業への1 及び 8~10の適用は1年の経過措置あり

〈改正点1〉時間外労働の上限規制

改正内容( 労働基準法 第36条 要旨 )
「時間外労働の上限を月45時間、年360時間を原則として、臨時的な特別な事情がある場合でも(いわゆる特別条項)
年720時間(休日労働含まず)、月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度とする。」

つまり、残業できる上限時間が労基法で定められた、ということです。

ところで、ここで疑問が出るのではないでしょうか?
「今までも36協定を締結する時は、月45時間 1年360時間を上限時間として設定していたけれど?」

その通りです。今までも36協定の上限時間はありました。
この上限時間は「時間外労働の限度に関する基準」に定められていましたが、実はこれには法的な強制力はありませんでした。

従って、特に特別条項においては1年720時間という上限はなく、実際にはこれを上回る時間数で締結された36協定もありました。
(実際に労働基準監督署で受理されているケースもありました。)

しかし、提出する際に労働基準監督署の窓口で時間数を減らすように指導を受けたり、特別条項で月80時間超えの時間数を設定すると、調査対象となる可能性もあったので、「時間外労働の限度に関する基準」で設定された時間数が、実務的には上限になっていました。

今回の法改正では時間外労働の時間数が労働基準法で明確になりました。
より厳しく時間外労働の時間数を管理していくことが必要になります。

〈改正点2〉特別条項を適用する際の厳格化

特別条項を定める場合、限度時間(月45時間 年360時間)を超える時間外労働を従業員に指示する場合の理由をより厳格にしました。

 改正内容(労働基準法 第36条 要旨)
「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」が、特別条項を適用する際に必要となりました。

 従来は「業務上やむを得ないとき」「業務の都合上必要なとき」などという理由で良かったのですが、より強い理由が必要になります。

 特別条項を適用するハードルが高まりますので、自社にとって、特別条項が本当に必要であるか再考することが望ましいでしょう。

会社として何をすればよいのか。

  1. 上限時間(1ヶ月45時間 1年360時間)を超えた時間外労働時間を設定している場合は見直す。
  2. 上限時間内であっても、設定時間の短縮が可能か検討する。
  3. 特別条項がある場合、本当に必要であるかを見直す。
    (時間外労働が必要となる理由、時間数、対象部署等々)
  4. 新しい様式での36協定の締結・届け出
  5. 根本的な解決策として時間外労働を削減する。

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〈改正点3〉年次有給休暇(年5日)付与の義務化

【 法改正の内容 】
「1年間に10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、会社は、5日以上の有給休暇を与えなければならない。」

なお、「労働者自身が取得した分、会社の計画付与で取得した分を含める。」という条件がついています。

例えば、自分自身ですでに5日を取得している(又はその予定)なら、会社としてはそれ以上の日数を付与する必要はない、ということです。

つまり、年間の有休取得日数が5日を下回っている人に、5日に到達するように会社が有休を付与するルールを作る、という事が今回の法改正です。

なお、対象となる「10日以上の有給休暇が付与される労働者」とは、入社6ヶ月以上の社員だけではなく、「週4日勤務で勤続年数3.5年以上」と「週3日勤務で勤続年数6.5年以上」のパートタイマー・アルバイトも対象になるのでご注意ください。

有休の取得日数が5日未満の人はどれ位いる?

よく言われることですが、有給休暇の取得日数にはばらつきがあります。
ある民間調査では、「有給休暇を90%以上取得する人が3割超を占める一方、全く取得していない人が約1割いて、二極化が進んでいる」としています。

それでは、有給休暇を5日未満しか取らない(取れない?)人がどれ位いるか、という事ですが、経団連の2016年の調査によると、「管理監督者において22%、一般労働者において11%程度」です。

なお、経団連が調査対象とした企業は従業員数の単純平均が、4400人以上なので、中小企業では、有給休暇の取得日数が5日未満の人の割合はもっと高くなると考えられます。
(実際にこの調査では有休の取得率も64%と高く出ています。)

会社として何をすればよいのか。

まず、貴社の「有給休暇取得率」そして、「5日未満の取得者」を把握してください。

この「5日未満の取得者」の5日に対しての不足分を取得できるように会社と本人で協議することになります。

協議するタイミングは法令で示されていませんが、有休の年間取得スケジュールが立てやすい場合は、有休付与日の前後に行うのが良いのではないでしょうか。

また、年間取得スケジュールが立てにくい場合は、3ヶ月や6ヶ月ごとの期間ごとに協議する、という方が進めやすいと考えます。
そして、不足分を付与する方法として、

  • 個別に取得予定日を決める。
  • 全社、または部署ごとに一斉の計画付与とする。
などが考えられますが、自社に合った方法で進めてください。

〈改正点4〉高度プロフェッショナル制度

正確には、「特定高度専門業務・成果型労働制」です。
言い換えると「ホワイトカラーエグゼンプション制度」です。

「仕事が遅い人ほど、残業をして手取り給与が増える。」というのは、多くの企業が、昔から解決できずに抱えているお悩みです。

いわゆる「残業問題」。(より正しくは「時間外労働問題」となりますが、ここでは、分かりやすく「残業問題」または「残業」と表現します。)
次のように、いくつか対策はあるものの完全な解決にはなりません。

  • 管理職は残業の対象とならないが、その管理職の範囲が明確ではない。
  • 裁量型労働の対象とするには、業種が限定されている。
  • 業務委託ならば、労働基準法の制約を受けないが、適法性に問題が残る。

そこで、「ホワイトカラーエグゼンプション制度」として、一定の範囲の労働者を残業の対象から外すことが
第一次安倍政権、さらにはそれより以前から議論されていました。

しかし、労働組合の反対などもあり前には進みませんでした。
今回、ごく限られた労働者が対象ですが、法制化されるに至りました。

高度プロフェッショナルの対象者は?

この「高度プロフェッショナル制度」ですが、大まかに言いますと、以下の条件を満たした場合に適用されます。

  1. 高度の専門知識等が必要とされる職種として省令で定めるもの
    (金融商品のディーラー、研究開発職、アナリスト、コンサルタント等が 念頭におかれています。)
  2. 対象となる職種が労使で合意されていること。
  3. 年収が平均的な労働者の3倍を相当程度上回る金額として省令で定める額以上であること
    (年収1,075万円以上が想定されています。)
  4. 年間休日104日以上のほか、勤務間インターバルや2週間連続の休日確保など健康確保措置がとられていること。

職種が限定される上、特に年収要件を見ると相当にハードルが高いです。
今後に発される省令を待たないと詳細が分からない部分もありますが、実際に適用できるのは一部の大企業になるのではないでしょうか。

なお、多くの企業には、ほとんど影響が無い法改正とも思われますが、将来的に「年収要件」は下がり、「職種要件」は広がる、という可能性も充分にあるので、今回の改正は大きな1歩だと思います。

しかし、そのためには会社側も「高度プロフェッショナル制度」を単に「残業が削減できる制度」という短絡的な捉え方をすることなく、きちんとした従業員の時間管理、健康管理を行った上で、適切・適正にこの制度を利用していくという考え方が必要でしょう。

会社として何をすればよいのか。

高度プロフェッショナル制度の検討を進めるならば、職種、年収要件等の詳細についての厚生労働省の省令が発されるのを待ってからの方が良いでしょう。

なお、健康確保についてはどのような措置を導入するか、という検討は現時点から進められると思います。

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〈改正点5〉3ヶ月単位のフレックスタイム制度

ところで、賃金支払いの五原則(労働基準法第24条)では、「賃金は当月に支払う」旨が定められています。

当所では
20年以上、多くの顧客企業の給与計算を行ってきましたが、とにかく「当月分の賃金は当月に支払う」ことは動かしがたいルールとして、厳然と存在していました。

しかし、「3ヶ月単位のフレックスタイム制度」は、
時間外労働(以下、「残業」)にかかる割増賃金は、3ヶ月分をまとめて計算して支払う、という改正です。
「賃金は当月に支払う」という常識が覆されました。 

現在のフレックスタイム制の再確認

さて、「3ヶ月単位のフレックスタイム制」をより理解するため、まず、現在のフレックスタイム制の内容を簡単に再確認します。

□従業員が自分自身で出社時刻・退社時刻を決定できる。また、1日の労働時間は自分自身で決められる。

□会社は、「コアタイム」として、従業員に一定の時間帯に出社させることができる。(例 10:00~14:00など)
 (※コアタイムが無いものが、本来のフレックスタイムです。)

□残業は1日ごとではなく、1ヶ月単位で集計して、当月の出勤すべき時間数を超えた分が対象となります。
 (例えば、大の月では177時間を超えた部分が残業です。)
 ( 例 )Aさんは次のように働き方を自分で設計できます。
      所定労働時間・・・1日8時間
      X月の所定労働日数・・・1ヶ月20日
      X月の出勤すべき時間数 ・・・1ヶ月160時間

      Aさんの仕事は月の前半が比較的、忙しいため、
      前半の10日は9:00~19:00の9時間出勤、
      後半の10日は9:00~17:00の7時間出勤 しました。

      AさんのX月の労働時間は160時間で、出勤すべき時間数を超えなかったので、残業は0時間です。

この例はシンプルなパターンですが、当月に出勤すべき時間数の範囲内において、「業務の繁閑」と「私生活の都合」とのバランスで、日々の出勤時刻・退勤時刻、そして勤務時間数を1ヶ月単位で自由に設計できるのがフレックスタイム制です。

3ヶ月単位のフレックスタイム制

それでは、本題の「3ヶ月単位のフレックスタイム制」です。
通常の「フレックスタイム制」は1ヶ月内で出勤すべき時間数を超えた部分が残業時間となり、残業手当が支払われます。
この期間が3ヶ月に拡張されました。

また、3ヶ月だけではなく2ヶ月単位とする事も可能です。

3ヶ月フレックスの活用例

活用例を示した方がお分かり頂けると思います。

Z社のケース
祭礼用品を企画・製造・販売するZ社は秋祭りのピークとなる9
月に向けて6月と7月が1年の内、最も忙しくなります。

7月中に商品の出荷手配を終わらせると、8月は仕事の空白期です。
毎年、6月と7月は毎日19時、20時と残業が続きますが、8月は仕事が激減、仕事の密度も薄くなり、1日8時間を書類の整理など仕事を探して、やり過ごしていました。

このZ社が「3ヶ月単位のフレックスタイム制」を導入、対象期間は6月、7月、8月の3ヶ月です。

同社のBさんは、6月と7月は平均して1日1.5時間の残業でした。
その結果、6月は30時間残業、7月も30時間残業でした。
(つまり、2ヶ月で合計60時間分を多く働きました。)

しかし、8月は1日8時間勤務のところ3時間を短縮、平均すると1日5時間勤務で、午後3時前後に退勤しました。
これにより、夏休み中の子供と一緒にいられる時間が増えました。
(つまり、6月と7月に貯めた60時間を8月に使った、ということです。)

お分かり頂けたでしょうか?従来の勤務形態では、Bさんは6月と7月にそれぞれ30時間分の残業手当が支払われ、8月は仕事が少ない中で、毎日午後6時まで会社にいました。

それが、「3ヶ月単位フレックス」導入後は、残業手当をもらう替わりに、8月に勤務時間を短縮しました。

今後は、フレックスタイム制として、「1ヶ月単位」「2ヶ月単位」「3ヶ月単位」のうちから会社と労働者のそれぞれにメリットがある勤務形態を設計できるようになります。

労働時間の管理 2つのチェック時間

さて、実際に「3ヶ月単位フレックス」を運用する際に、従来、1ヶ月ごとに行ってきた労働時間管理を全く行わず、3ヶ月が終わったところで、労働時間を集計すれば良いのでしょうか?

「3ヶ月単位フレックス」でも長時間労働を防ぎ、健康管理をする必要性から労働時間数に一定の歯止めがかけられています。

【 労働時間が1週間に50時間を超えたら残業扱い 】
まず、1週間の労働時間が50時間を超えたら、その分はその月に残業手当として支払う必要があります。
1日平均で2時間以上の残業をすると、労働時間が50時間を超えてしまう計算になります。

したがって、まずは毎週50時間を超えないように、労働者の自己管理、そして会社の時間把握が必要です。

つまり、1週間の労働時間数によって次のようになります。

週40時間以下 残業はなし
週40時間超え50時間以下 残業は3ヶ月まとめて集計
週50時間超え 残業は1ヶ月で集計

【 残業時間が1ヶ月に60時間を超えたら残業割増 】
それと、「残業時間」(労働時間ではありません。)が、1ヶ月に60時間を超えたら残業の割増率が50%となります。
(但し、中小企業には猶予措置あり。)

いかがでしょうか?慣れるまでは複雑で少し分かりにくいのですが、上手に活用すると、勤務の柔軟性、自由度が高まる制度です。